■というわけで、身銭をきって中国経済に飛び込む前に、中国経済に対する整理をやっておこう■先月に2009年の経済統計が発表された。昨年の成長率は前年比8・7%。その総額は49090億ドルだそうで、日本に肉薄し、2010年には世界2位に踊りでることは確実、といわれている。しかも、クレジット・デフォルト・スワップの日本国債に対する保証料率が年初に中国を上回るようになった、つまり債務不履行に備えた保険料が日本国債の方が高い=日本国債の方が信用度が低い、ということで、いよいよ今年、日本経済は中国<経済の後塵を拝すことになった、と多くの専門家が思ってらっしゃるようだ。で、中国経済が日本を買いたたく!といった論調の記事も、見かけるようになった
■そういう中で、中国経済は前途多難だ、あぶない、などと言おうものなら、こいつはアジア経済をぜんぜんわかっていない!と批判にあってしまう。
■で、気がついたのだ、今一番 中国 経済に対し厳しい評価をしているのは、中国人自身なのだ。 GDP 発表後に発表された中国人学者らの論評を、ちょっとのぞいてみよう。
■まず、産経新聞の石平さんのコラムでも紹介されていた在野の人気評論家、 牛刀氏 の「 GDP が日本を超えるのが、なにか?」と題された論評。
■、引用開始
「 GDP は 中国 庶民にとって魔法の呪文となった。しかし、外国メディアがいかにウソをここうが、 GDP にこだわる必要はない 」
「誰もが知っているように、 中国 の GDP は3年連続で重大な誤差が生じている。地方と中央の統計の誤差だけでなく、中央統計そのものにも誤差がある。年間を通しての誤差は3兆を超えているだろう。 そんななんの信用もないGDP が日本を超えたとて、どんな意味があるのか」
■「( 中国 の GDP は)官僚の出世の指標でしかなく 、大量の偽 GDP を生みださざるをえない状況で、これをデータとして使うなんて、荒唐無稽どころか恥知らずだろう。」
「さらに悪辣なのは、この指標を完遂するために、そして抜擢や重用を得るのに便利だからと、人民の利益を好き勝手に脅かし、暴力で強制立ち退きさせ、古い町を改造するやり方でいたるところに建築物をつくる、それで高めた GDP だ」
■「中国のマクロ経済はすでに破たんしており、消費と輸出は重大調整局面にはいり、ただ貨幣を乱発することで投資を増やしているだけだ」「( 都市部の平均収入はやや上がっているが、為替価値の要素などを考慮すると)実際の購買能力は27%減少している」「 中国 に前途があるとしたら、徹底して投機目的の不動産売買をやめさせることであり、全国民を投機に走らせ基本的良知を失わせることではない」(引用おわり)
■この牛刀氏ははっきりと「 GDP は外国の投機商と恥知らずな政客がさわいでいるだけ。彼らの事情でいっていることなのだ」と断言している。
■次は 新華社 ネットが掲載した評論家、 李北陵氏 の論評。
■引用開始
「 中国 GDP 世界第二位を誇張していう必要はまったくない。」
「中国人の一人当たり GDP はたったの3700ドルで、世界で100番目以降に位置しており、平均4万ドルの日本と比べてもまだまだ差は大きい。国が富んでも民は貧しく、今後はもっと問題解決への努力が必要だ。強国富民の日本と比べて、 中国 は前向きに努力し、ほらを吹かずにもっと実行すべきである」
「(経済は国力のひとつであるが)科学、軍事、ソフトパワーももちろん総合国力のうちだ。そのいずれをとっても 中国 はまだ日本に一定の距離がある。」「日本は1000グラムのオイルで10・5ドルと等額の価値を生む。これは中国の7~10倍である」「 中国 はまだまだ困難と挑戦の多い発展途上国である」(以上)
■李氏の論評は日本通でしられる元外交官、 唐家セン さんの発言を引用しているのだが、だいたい日本通とよばれる中国人は、「中国が日本を超えたなんて、とんでもない、そりゃちょっとは差が縮まったかもしれないけれど」というレベルの感想しかもっていない。もちろん、謙遜や日本に対する慰めではない。中国人はあまり謙遜をしない人たちなのだ。
■中国では最近、国の発展というのは、 GDP の大きさじゃなくて国力なんだ、という表現をこのんで使う。 中国 は GDP が大きくても、国力はまだまだ低い、と思っているのだ。社会科学院が昨年末にだした「国際情勢 イエロー ブック」によれば、国力総合力では米、日、独が世界のトップスリーで、 中国 は第7位としている。この場合、国力とは領土・自然資源、人口、経済、軍事、科学技術の五要素による、社会発展、持続性、安全・国内政治および国際貢献の四分野に対する影響を含めて評価したもので、ベストテンは米日独加仏露中英印で イタリア と ブラジル が同点10位。
■ちなみに 米国 は軍事、経済、科技でトップ(くさってもタイですのよ)。日本は領土資源、人口で当然低く、軍事の順位もうしろのほうだが、軍事についてはわざわざ特別表記していて、「総量としての評価は後ろの方になるが、典型的な少数精鋭軍であり、実質の順位はもっと前になるはず」としている。ちなみに軍事の2位は中国となっているが、性能や質ではなく、単純に兵士の数と武器の量で順番を付けているふしがある。 中国 は人口で一位、 ロシア は領土資源で一位。
■最近聞いた話では、ある 中国 官僚が、中国で長らく仕事をしてきた日本の財界人にこんなことをいったそうだ。「国力とは、軍事、経済、人口、文化、交渉力の五つの要素からなりますが、 中国 は軍事と経済でまだまだおよばない」。国際社会であれほど、軍事費増大がさわがれ、 中国 経済がもてはやされていながら、これが中国人の本音の自己評価だと思う。
■話がずれたが、なぜ 中国 経済が国際社会でもてはやされているのに、中国人自身が危機感をもっているかを、もう一回整理すると、ひとつには統計数字のいい加減さを肌で感じているからだ。
■作年、中国ではやった言葉に「被統計」というのがある。「被(~される)」というのは最近の中国でよく使われる流行語で「被河蟹(被和諧)」「被自殺」なんて言葉が以前はやった。いうまでもなく、被和諧(和諧される)とは 胡錦濤 政権のスローガンである和諧社会(調和しのとれた社会)を本当は実現していないのに、実現していることにされる、という意味で、ネット上の反動的言論を削除されたりすることを指す。和諧を発音の同じ河蟹に言い換えているのは、一種のネット隠語、つまり「被和諧」の書きこみ自体を削除されないように表現を隠すためだ。同じように、政治的警察的圧力で無辜の市民が自殺に追い込まれたり、あるいは他殺なのに自殺だと報告された社会事件などについて「被自殺了」(自殺させられた)と表現したりする。
■「被統計」というのは、統計させられる、つまり政府目標数値にあわせて統計をねつ造されるという意味だ。中国の統計がいいかげんというかでたらめ、というのは今に始まったことではないが、昨年はその事実を公的な場で批判する学者が多く、「被統計」問題が突出した一年でもあった。
■たとえば、国家統計局が「昨年上半期の都市部の平均サラリー増加率が前期比12・9%増、農村部で8・1%」と発表したら、「そんなわけあるか!」と非難が殺到。あとで「実は国営企業と外資企業の給料を平均しただけの数字です」といいわけした事件があり、これについてネット上では統計局によって「被統計」「被増長」(統計させられた)(成長させられた)と批判の声があふれた。
■その前には国家統計局が発表した経済統計で、消費電力量がむしろ減少しているのに、工業生産が急激に増加しているのは整合性がないという指摘が社会科学院の学者も含めた各方面から起きた。たとえば五月の全国の発電量増加率は前年同期比-3・5% 、なのに工業生産成長率は8・9% 。「世界中、どこをさがしても電力消費と工業生産の増加幅に10ポイント以上の差がある、こんな統計ありえない 」(社会科学院経済研究所の袁鋼研究員)というわけだ。
■で、その批判をうけて下半期に急に電力消費が伸びたりして、普通の バランス に調整しなおしたりするのだ。こんな調子で就職率や内需、自動車販売数、環境データなども、政府目標や世論のために作られているとすれば、そのデータを真剣に分析して中国経済を論じている世の経済学者やアナリストの見立てはどのくらい信用できるのか。
■先日、ながらく日中の政治・経済関係の最前線で働いていたとある人物がこんなことをおっしゃっていた。「日経新聞は罪深い。 中国 経済の未来がさも薔薇色であるかのように、ミス リード している」「あの国は為政者ですら、自国の経済実態をつかめていないのだ」「「リーマンショックの前から 中国 経済は事実上破たん寸前だった。リーマンショックで世界がきゅうに悪くなったため、 中国 は結果的にめだたなくなった」
■確かに、リーマンショック以前、 中国 は過剰流動性の問題が限界ぎりぎりで、 温家宝 首相は本当に余裕のない表情をしていた。それがとりあえず、リーマンショックで延命した感はあるが、中国の経済構造が根本的に改善されたかというと、そうではない。いずれ、過剰流動の問題、バブルの問題は表面化してくるだろう。
■しかし、こうもおっしゃっていた。「市場に金をジャブジャブ流しているのだから、今いけば、儲かるのはあたりまえ。 中国 経済の未来が明るいかどうかというのと、 中国 にビジネスチャンスがあるかどうか、というのは別問題」という。
■付け加えておくが、 中国 はおそらく市場に流れているマネーの量を正確に把握しているのかどうかは疑わしい。精巧な偽札が流通紙幣全体の2割を占めるといわれているうえ、中国の裏経済を支えている銭庄といわれる ヤミ金 は、正規の銀行より資金力があるといわれている。中国の緩和政策も引き締め政策も、きっちりしたデータを根拠に行っているというよりは、なんというか野性のカンに頼っているっぽい。
■経済が持続的に安定して発展していることと、その市場でもうけられるかはまったく別の次元のことである。前述の中国通は「経済の混乱した国共内戦時代だって、儲ける企業はぼろ儲けしていた」という。ようするに、国が不安定になり、規制がザル化した国の方が、荒稼ぎに適している、ともいえる。
■やはり 中国 に通じたある企業家はこう言った。「政府や党との人脈を重視する人が多いけれど、うちは政府や党内の役職ではなくて、ファミリー(華僑の一族)との関係の方を重視します。彼らは政府が転覆しても金儲けをできるだけのネットワークを築いているので、彼らとの信頼関係ができていれば、中国がどうなろうと、ビジネスはできる」。
■というわけで 中国 はまさしく鉄火場のような、腕と勘をたよりに生き抜くか、かもにされて骨をしゃぶられるか、の世界のようだ。もちろん、見た目はだんだんソフィスティケートされてきたけど
■そんな 中国 経済が、国際社会からものすごく期待され評価されているのは、牛刀氏が指摘しているように「恥知らずな政客と外国の投機商が自分たちの事情で」やっているだけなのだろう。 中国 経済はすばらしい!みんなこっちへおいで、と手招いているが、それはハゲタカがカモを呼び込む甘いセールストークかもしれない。
■ 中国 は持続的安定的に発展の道を進んでいるというよりは、波乱含みの鉄火場の様相である。しかし、世界中の経済がおちこんで、今までのやり方でまじめに働いても金にならん、と思ったら、 中国 市場で一発あてるぜ、というのも正しい選択の一つなのだろう。ただ、負けがこんできたとき、チャカを持ち出すヤツがいそうなのが、こわいよね。(胴元が持ち出す場合もあるが)。
蛇足
そんな訳はありませんが、電気の消費量と経済活動には大きな開きのある統計を鵜呑みにするァフォやバカは日本にいっぱいいます・。政権からして中国の宣伝隊ですし、マスコミも朝日、毎日、NHK、TBSを中心に日本人を嵌める為に日夜活動をしております。
WITHOUT YOU by Mariah Carey