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世界支配のための戦争に徹底的に反対するリバータリアンの政治評論家

副島隆彦の学問道場から・。http://www.snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi



アメリカでロックフェラーと戦っているリバータリアンの政治評論家、


ジャスティン・レイモンド氏の文章を紹介する。


彼は、アメリカのエスタブリッシュメントの世界支配を


「秘密結社の陰謀論」に頼ることなく暴き立てた


「マレー・ロスバード主義者」である。


2006.01.23

アルルの男・ヒロシです。今日は2006(平成18)年1月23日です。

今日はアメリカで活躍する、リバータリアン評論家のひとりである、ジャスティン・レイモンドJastin Raimondo という人物が書いた文章を抄訳の形で紹介します。





ジャスティン・レイモンド氏


このレイモンド氏は、主にアメリカ(とイスラエルの)の世界支配のための戦争に徹底的に反対する人々が結集している、ポータルサイトである反戦ドットコム(Antiwar.com)の主要コラムニストのひとりである。彼は、時々、アイソレーショニスト(アメリカ国内問題優先主義者)のパット・ブキャナンが主宰している、政治雑誌の「アメリカン・コンサヴァティヴ」にもときどき文章を寄せている。


彼は毎週のようにブッシュ政権のイラク戦争や、シリア・イランに対するネオコン派の好戦的な挑発行動を徹底的に批判するコラムをインターネット上に発表している。その全ては「反戦ドットコム」で無料で読むことが出来る。私にとって貴重な情報源である。


彼は、2001年9月11日にニューヨークで起きた世界貿易センタービルに対する、「イスラム過激派」によるものとされる航空機テロと「ビル爆破テロ」事件にイスラエルとネオコン派が深く関わっていたという内容の著作をはじめ数冊の本を書いている。しかしながら、彼の存在はネット上では有名であるものの、「ニューヨーク・タイムズ」などの有力紙には登場しないので、日本では殆ど知られていない。





レイモンドの近著(未邦訳)




しかしながら、私は彼の文章を非常に高く評価しており、何度かこのサイトに併設されている「アメリカ政治情報メモ」掲示板の中で紹介してきた。この掲示板サイト常連のロシアチョコレート氏もこの人物に注目しているはずである。


彼は、オーストリア学派のリバータリアンで、1926年生まれのユダヤ人であるマレー・ロスバードという人物の伝記『統制国家の敵:評伝マレー・ロスバード』(An Enemy of the State: The Life of Murray N. Rothbard)という著作も書いている。レイモンド氏はその文章の反戦主義者ぶりから、まるで左翼の過激派ではないかと思うときがあるものの、保守派であるリバータリアン、ロスバードの伝記を書いている人物であり、れっきとした保守派である。ゴリゴリのパレオ・コンサヴァティブのパット・ブキャナンの雑誌に文章を定期的に書いていることからもそれは理解できる。





マレー・ロスバード教授





レイモンド氏のロスバードの評伝の表紙


マレー・ロスバードは、リバータリアン派の人々がその業績を紹介している。例えば、学者の森村進氏が監修している『リバタリアニズム読本』の中では、ロスバードの経済学者としての主著である『自由の倫理学』についての解説ページがある。


しかし、ロスバードは、独特な経済史を何冊も書いている。例えば、連邦準備制度理事会の存在に異議を唱えた”The Case against the Fed”(未邦訳)があり、今回レイモンド氏が解説文を書いている、“Wall Street, Banks, and American Foreign Policy”という大体英文で100頁くらいのパンフレットもその一つである。


http://www.mises.org/store/Wall-Street-Banks-and-American-Foreign-Policy-P149C0.aspx


ロスバードの経済史の特徴は、あくまで個人の動きを通して歴史を描き出すという手法に特化しているということだ。それをレイモンド氏は「方法論的個人主義」として説明している。前出の森村氏の著作によると、方法論的個人主義というのは、「社会的な集合を研究する際にその構成員である諸個人の行動を分析することで説明を試みる」(同書62ページ、原谷直樹氏の解説)ものである。


これは社会科学の一手法であるが、ぶっちゃけて言うと、このやり方は、人脈と血脈を解説したり、企業の重役兼任構成を解説することで利権の結びつきを説明しようというやりかたのことである。この手法に基づいて私も『ジャパン・ハンドラーズ』を書いたと言ってもいいかもしれない。


別の言い方をすれば、曖昧な国家の存在や秘密結社(例えば300人委員会とかフリーメーソン、イルミナティ)が、陰謀を巡らせて世界に混乱と戦争を引き起こしているというアプローチではなく、あくまで


「この財界人とこの政治家がこう繋がっているから、彼らが共通のこの利害を実現しようとして、こういう戦争を起こすように政権に働きかけた、そして市場を独占して大儲けしました、ひどいですねぇ、みなさん」


という風に解説するやり方である。まさに『赤い盾』の広瀬隆氏がやっているやり方そのものである。


だから、ロスバードの文章は、デヴィッド・アイクとかフリッツ・スプリングマイヤーといった陰謀論の大家たちで、とりわけ熱心なキリスト教徒である著者達の、過度なキリスト教特有の誇大妄想的な思いこみがない。純粋に事実で構成されているのである。


そもそも日本人には悪魔(サタン)というキリスト教特有の概念そのものが存在しない。だから、スプリングマイヤーの感情たっぷりにサタンとか悪魔の手先として、国際金融資本家たちを面罵する文章を読んでも今ひとつピンと来ないわけである。


それでも、スプリングマイヤー自身も、主著『イルミナティ:悪魔の13血流』(KKベストセラーズ)の中で、ロックフェラーやらロスチャイルドのようなサタンの系譜をひくとされる13家や、アダム・ヴァイスハウプトの思想を指しながら、「悪魔主義は力と自己利益のみをしんじるのである」(同書32頁)で書いている。そこから、「真実読み破り式」の理解をすれば、彼らが云わんとしていることが判るだろう、とは思う。


だから、あくまでロスバードは、国際金融資本の”陰謀”を、方法論的個人主義のアプローチで書いているわけだ。つまり、ユダヤ人のレイシオの考え方を、陰謀を暴くために援用しているわけだ。


ゆえに、ユースタス・マリンズのような、優秀ではあるものの、感情的な筆致もまた一方で多い著者からはロスチャイルドの走狗として認識されている側面もあるようだ。(しかし、マリンズが合衆国議会図書館の資料と蔵書を駆使して書き上げた、あまり奇矯ではない著書の幾つかは正当に再評価されなければならない)


だから、ロスバードの文章は、徳間系のユダヤ陰謀論の熱心な読者からは踏み込みが足りないという印章をもたれているはずだ。しかし、日本に置いて、ロックフェラー・ロスチャイルドをはじめとする国際金融資本が動かす世界史観が根付きにくいうえに、すこしでもそのようなことを口にすると陰謀論扱いされるのは、太田龍氏のようなユダヤ陰謀論のアプローチが、抱えていた決定的な欠陥であると思う。(しかし、私は太田氏の紹介する本の熱心な読者である)言ってみれば、導入部分で戦略を間違ったのかも知れない。





広瀬隆氏


また、ロスバードが広瀬隆氏のような左翼の反原発からスタートした人とも違う点は、彼があくまで統制経済を悪として捉えた上で、自分は自由主義経済の擁護者としての立場に立っている点だ。その前提で、アメリカ国民を騙しながら、国家統制を公然と推進している国際金融資本の行動を糾弾しているわけだ。反権力といえば、サヨク・朝日新聞・岩波書店という認識しか存在していない日本の言論界には、反体制の右翼が存在するということが理解できないかも知れない。


彼はあくまで、「真正自由経済主義者」の旗を降ろすことなく、ロックフェラー、モルガン、ロスチャイルドのような金融資本家を批判している。(ただ、ロスチャイルドに関してはあまり批判していない気もする。彼の名前が“ロス“バードであることも関係しているのか?)


以下に載せる文章は、私による試訳として、“Wall Street, Banks, and American Foreign Policy”の最後につけられた、レイモンド氏の解説を抄訳したものである。


ロスバードの全文はパンフレットとして、ミーゼス研究所が頒布しているが、リバータリアン系のウェブサイトの「ルー・ロックウェル・ドットコム」に転載されている。

http://www.lewrockwell.com/rothbard/rothbard-lib.html


残念ながら、私の英語力はそれほどのものでもないので、訳出にあっては、意図を誤らせないように心がけたが、あまり巧い訳ではない部分がかなりあるかも知れない。文章をそのまま訳すのではなく、内容をくみ取ってまったく違う日本語で表現したり形容詞をまったく省略した部分もある。


なかなか文章のいわんとしていることを理解していても、アウトプットで日本語に直す作業はかなり大変なものだと実感した。余力があれば、ロスバードの文章自体も訳してみて、「会員ページ」で随時公開していきたいと思います。


ロスバードは、南北戦争直後からレーガン政権までのアメリカ史を、ロックフェラー、モルガン、ロスチャイルドの権力闘争の姿として時系列に従って描いている。JPモルガン、ピーボディ、ジェイムズ・スティルマン、ハウス大佐、モンタギュー・ノーマン、バーナード・バルーク、ヘンリー・キッシンジャー、デヴィッド・ロックフェラーといった重要な登場人物について一通り網羅してある。


このロスバードの文章を通して、まずアメリカの金融財閥による世界支配の構図を理解しておくことによって、今後、さまざまな、厖大な人物が登場する、いわゆる「陰謀論」の著作や広瀬隆氏の著作を理解するための基礎体力をつけることが出来るようになる。


そして、この解説文の最後の方でレイモンド氏が、読者として他の大勢の御用学者に対して呼びかけている、「真実はいずれ露見する」というメッセージは私たち日本人の研究者にとっても非常に励みになるものである。レイモンドの論文を皆さんも是非読んで頂きたい。機会があれば、彼のコラムを定期的に紹介していきたい。


実は、このロスバードの論文から多くを学んだ上で書かれた本が、昨年の秋に草思社から出版された、『マネーを生みだす怪物』(エドワード・グリフィン著)なのである。しかし、グリフィンの本は、判りやすくするためにページ数を増やしすぎて、日本語訳は全部で700頁超、価格で2800円というどえらいものになってしまったので、あまり売れていないらしい。この本も熟読すれば非常に面白いものである。グリフィンは、ロスバードと同様に、貨幣制度は金本位制に基づくべきであり、ロックフェラーたちの生みだした「ドル紙切れ・刷り散らかし体制」に反対する立場のアメリカのゴリゴリの保守派(ジョン・バーチ協会)である。


この本を文春の『諸君!』という雑誌で、反竹中平蔵の言論を繰り広げている、東谷暁(ひがしたにさとし)氏が批評していたが、そのあまりの無理解、悪意に満ちた批評に私自身が唖然としてしまった、そのことを付け加えておきます。




アルルの男・ヒロシ 拝




“Wall Street, Banks, and American Foreign Policy”

あとがき:ジャスティン・レイモンド


マレー・ロスバード教授が書いた1984年の論考は、現代のアメリカの歴史を次のようなものとしてみている。


つまり、大富豪同士の権力闘争、モルガン家とロックフェラー財閥による争いとして描いているのである。


そして、教授は次のように結論づけている。


「権力を持った金融資本家たちは、誰が1984年の大統領選挙で勝とうが、安心して眠ることが出来るであろう。なぜなら、どの候補者にも彼らの息が掛かっているからである」


このロスバードの論考を最後まで読んできた読者の皆さんなら、この結論ですら幾分、真実を控えめに言っていると思われるのではないだろうか。


なぜならば、ここで私たちが読んできた論考は、パワー・エリートの視点から見た全般的で、簡潔に圧縮された、20世紀の政治史そのものだからだ。


この中に、ロスバードの持っている豊富な知識が極めて手短に、高度に専門化された形で示されている。それは、社会科学の分野における「方法論的個人主義」のアプローチに人生を捧げてきたロスバード教授の研究の結晶なのだ。


この論文の初出は1984年に発行された、「ワールド・マーケット・パースペクティブ」というコンパクトな経済雑誌の一論文としてである。その時期はレーガン政権のただ中にあった。


リバータリアン雑誌である「センター・フォー・リバータリアン・スタディーズ」読者向けに1995年に再版され、2005年にはネット上では初公開されたものである。


左翼と右翼の理論家達というのは、歴史上の物事のつながりを分析したり説明しようとするときには、えてして抽象的な”権力”というものを引き合いに出す。


しかし、ロスバードの用いた「方法論的個人主義」のメソッドを使う場合、全ての人間の営みは、個人としての主体のそれとして説明される。この方法論的個人主義のメソッドとオーストリア学派の経済学を援用することによって、ロスバードは、アメリカのエリート層と現代史をひとまとめにして論じる事に成功したのである。


ロスバードの分析手法を説明しよう。

一つ目は、オーストリア学派経済学の基本原則によって成り立っている。

特にルートヴィッヒ・フォン・ミーゼスによる、銀行業と景気循環(ビジネスサイクル)の起源についての研究の影響が大きい。


このテーマについての経済学的分析は、彼の晩年の著作である、『連邦準備制度に反対する』(The Case Against the Fed 、ミーゼス研究所から1995年出版)の中でも行われている。


この著作の中で、教授は、どのようにして連邦準備制度(FRS)が、疑うことを知らない善良なアメリカ人に精力的な銀行家達によって、無理矢理押しつけられるようになったのかを解説してくれている。


ロスバードの経済分析は、政府(の発行する)紙幣がどのようにして生まれたのかということや、本来的に不安定で(かつ本質的に不正な存在である)準備銀行というもの、さらに景気循環という現象が、何故20世紀の世界経済において起きるようになったのかというテーマ群について実に、明快で、簡潔で、広範囲にわたって説明している。


ロスバードが論文の中で書いているが、マネーというものが、他のものと同様にコモディティ(商品)であり、それゆえに市場原理にしたがうべきであると考えることは、その本質を理解する上で非常に重要なカギになってくる。


FRS(連邦準備制度)という形で政府が銀行家に特権として与えた、紙幣を刷り散らかすことで資本主義経済に流動性を提供する力というものは、インフレを生みだすばかりでなく、プルートクラット(富豪政治家)と呼ばれる永続的な大富豪による政治支配を生みだす原因にもなる。


この評論文のなかでも、彼は、『連邦準備制度に反対する』でやったのと同じように、パワー・エリートに付いて分析している。ロスバードのパワー・エリートの分析の腕が冴え渡るのは、連邦準備制度を設立するに到るまでの歴史を書いた部分である。


この論文が驚異的なのは、その分析が細部に到るまで詳しくされていることである。ロスバードは、詳細に社会、経済的な事実の提示、急激に拡大する「国際金融資本」たちの閨閥を検証可能な事実の形として提示している。そして、それを我々は、ロスバード理論に基づいて理解しなければならない。


そこで、ロスバードの「階級間の関係分析」の理論を理解する必要がある。


彼は、マルクス主義者の編み出した「階級闘争」の考え方を自分なりに再構成している。マルクス自身が、フランスの自由主義経済学者の理論を剽窃して階級闘争理論を作り出していた。マルクスは、リカードの労働価値説を剽窃して、曲解して、通俗化して自分の理論をつくったようなものだ。この前提に立って、マルクスは、労働者を所有者に対峙させる階級闘争の考え方に行き着いた。


ロスバードは、自由主義理論を、その理論のよって立つ根本のところに立ち返ることによって、リバイバルさせたといっていい。それが彼の偉大な功績の一つである。


自由主義理論では、人民と国家の対立関係で考える。

ロスバード理論では、政府と、その顧客とその権力執行者は、ものを生産する人々を、税金とか規制とか止むことはない戦争を手段に使って、搾取し奴隷化する、と考えられている。政府というものは国民にとっての重荷であり、寄生虫であり、自分の権力を使っては何も生みだすことが出来ない。宿り木のようなものである。


こう考えることが、リバータリアンの階級分析の完成型にむけてのまず第一歩である。


ところが不幸なことに、こういう風に考えた段階で、自称リバータリアンの多くは、思考停止してしまう。彼ら自称リバータリアンの面々にとっては、「国家は敵だ」とところまでの理解で納得するだけで十分なのだ。つまり、これ以上、踏み込んで考えなくても良いと彼らは安心してしまう。


イギリス首相だった、ウィリアム・ピットがいみじくも1770年に言っているとおりである。


「王様の玉座の背後には、王様以上に権力を持った本当の権力者達が控えている。」


そして、本当の権力者に対して気が付かないというのは彼ら自称リバータリアンの面々の理論的欠陥である。彼らリバータリアン左派たちは、社会科学の領域と空想的な計画を云々することに安住している。そんなことだから、彼らの存在は本当の権力者に安全パイだと思われているので、彼らの言論は放し飼いにされているし、時には意図的に経済的に支援を受けてもいる。


左派リバータリアンが、彼らの分析を今一歩先に進めることが出来なかったのは、多くの場合、彼らに真実を暴くという腹が据わっていなかったからである。リバータリアン理論とオーストリア学派の経済分析の洞察力があるならば、次に進むべき路は明らかである。


ここに至っては、経験に基づいた証明すら必要ではない。それどころか、真実というのは、純粋な理論、就中(なかんずく)、オーストリア学派によるマネーと銀行についての理解、それからミーゼス式の景気循環起源論を知っていれば、演繹的に導かれてくるものだ。


そうやって導き出された成果は、『ジャーナル・オブ・リバータリアン・スタディーズ』の創刊号(1977年冬号)の中で、ロスバードの二人の弟子、ウォルター・E・グラインダーとジョン・ヘーゲル3世によって発表されている。

「国家資本主義理論に向けて。意思決定と階級構造の究極の姿とは」という論文である。


「本当に自由な市場に置いては、銀行家による独占というものは生じ得ない。「しかしながら、市場経済システムにおいては、企業活動に勢力が注がれ、資本市場の中における意思決定というものが重要になる。それは、ある種の専門化によって報いられるかなりの多額の利益があるからである。」(論文の引用)


彼らによれば、この「専門特化された資本市場は、市場経済システムの本質的に統合的な性質によって、決定的な意思決定の座を占める」という。


経済的手段よりも政治的な手段を行使することを選ぶ人々がいることで、これらの巨額の財産を持った人々は、インサイダーとして、市場を独占するように動き、彼ら自身はリスクから遠ざかろうとする。銀行家達にとって、特に国家権力を自分の利益に合うように行使したいという誘惑はあらがいがたいものである。


なぜならば、そうすることによって、彼らは自分たちの財産を増やし続けることが出来るようになるからだ。これらのやり方によって可能にされた資産創造によって、銀行組織を、預金者たちの要求に従わないですむようになる。それゆえに、預金者に対する銀行家たちの意思決定権限を相当に強めることになる。


この産み出された資産に起因するインフレ傾向は、大企業による内部的手段による「直接金融」に基づく資金調達よりも銀行を介した「間接金融」への志向を増やすことになる。結果として、大銀行の意思決定力が、大企業の活動に対して及ぼす影響が強まることになるわけだ。


オーストリア学派の洞察は、周期的な景気拡大と不況につながる市場のシグナルをゆがめてしまう、中央銀行家たちの役割に焦点を当てている。この恐るべき景気循環は、本来は、完全市場経済に特有の矛盾として常に批判されているものである。


しかし、実際には、資本主義は本当の意味で自由な市場経済とはほど遠いものである。(そう思うなら、まず自分自身のプライベートバンクを初めてみるといい)

アメリカのバンカー達がもっとも嫌がるのは、完全に自由な銀行システムなのだ。


ロスバードは、景気循環というものを生じさせる原因となったそもそもの市場操作の濫觴(はじまりのエピソード)に触れるだけではなく、その市場操作の原因(と主な受益者たち)を探り当てている。ロスバードの師匠に当たるフォン・ミーゼスが、市場に一旦政府が介入すると、必然的に、その被害を「回復」するために泥縄式で介入を続ける羽目になるぞ、と最初に指摘した人物である。市場を歪めてきた政策を「修正」するために、さらなる攻撃が市場経済に加えられていく、ということは理の当然だ。グラインダーとヘーゲルが次のように書いている。




「アメリカでは、この政府の介入は当初は断続的なものだった。連邦レベルでも州政府レベルでもそうだった。


そして、その政府の介入によって、マネー・サプライが増大し、定期的に健全な経済活動を歪める結果となった。この景気循環を伴うマネー・サプライの操作は、アメリカで支配的なイデオロギーが、一般的にレッセ・フェールの自由主義的な教義から、政治的資本主義のイデオロギーに変容していく際に大きな役割を果たした。

政治的資本主義においては、国家が出しゃばることで、本質的に不安定な経済秩序を合理化させ安定化させるのだ、として捉えたところにその特徴がある。」


<資本家たちは、実は資本主義の敵である>


この考えを進めていくと、ロスバードは詳細に論じているように、ある奇妙な歴史的な事実について説明することが出来る。


それは、大資本家たちこそが、本当の資本主義にとっての最大の敵であったという事実である。


過去50年間に社会「改革」と称されてきた全ては、「理想主義的」な左翼によって推進されてきたばかりではなく、山高帽(シルクハット)を被った、でぶっとした腹をもった人物として風刺されているウォール街の「経済的王党派」たち、まさにその人達によっても推進されてきたのである。


ネオコン派は、「大きな政府」に対する闘いを、ゾロアスターとアフラ・マズダという善と悪の神々が戦うというマ二教の二元論の教義になぞらえて、光(つまり資本主義)と闇(つまり、もはや殆ど信用を失った左翼知識人の残党)の間の闘いであると捉える。


しかし、ロスバード流の理解は、より示唆に富み、複雑である。二元論で理解するのではなく、自由のための闘いというのは三すくみの構造で理解される。


なぜならば、ジョン・T・フリンとアルバート・ジェイ・ノック、そしてフランク・チョードロフといった学者が書いているように、資本家たちは、決して資本主義の擁護者ではないからだ。ノックが次のように書いている。


「実に興味深い話だが、アカたちにとっての敵であり、集産主義にたいしてもっとも精力的に対抗しているとされているはずの人物達が、まさに国家に対して賄賂を送ったり、困らせたりして、集産主義に対してまっしぐらに突き進ませている張本人であるということなのだ。(「アトランティック・マンスリー」、1936年の記事)」


ニューディール経済政策は、ロスバードが指摘しているように、ハーバート・フーバーという大企業の擁護者によって、そのさわりが実施されており、進歩的時代の改革を先取りしていた。

ガブリエル・コルコのような、修正主義の経済史学者が書いているが、進歩的「改革」の名の下に大企業に規制を加えた当のその人物達は、まさにそのカルテルとトラストの中から選び出されていた、ということになる。


もちろん、市場独占をしている人たちは、競争相手が規制によって骨抜きにされる限りにおいては、政府が大企業を規制したり、潰したりすることをむしろ歓迎するものだ。

この国において、国際金融資本という、もっとも巨大でもっとも政治的に影響力がある既得権をもっている者たちによってではなく、そうではない形で中央銀行や福祉国家、公民権運動、アファーマティブ・アクション(差別是正措置)といった、経済計画や集中化が行われていたらば、それらにむかっての動きは支持されていただろう。


モルガン家、ロックフェラー財閥、クーン・ローブ財閥といった面々は、第1インター、第2インター、第3インターナショナル(コミンテルン)といった、長年の自由主義の大敵と呼ぶべき連中と、まるで二人三脚で動いてきたといっていい。


巨大な多国籍企業、そしてそれらの経済的なパートナーは、政府と大銀行と連合しながら、地球的な規模でその影響力を拡大している。彼らの野望は、フィナンシャル・タイムズのコラムニストでビルダーバーガーのマーティン・ウルフの描くような「世界中央銀行」の創設であり、地球規模の計画経済であり、国際的な福祉国家の誕生である。その体制では、アメリカ軍が彼らの利益を保証するために安全保障維持を行っているだろう。


アメリカで中央銀行(FRB)を設立する長い闘いが終わったあとで、経済の「高位貴族」というべき人々は、いよいよ国内の経済政策を完全に統制下に置いてコントロールできるようになった。


あと彼らに残された仕事は、彼らの支配をアメリカ以外にも広げることであり、そのために、外交問題評議会を設立し、そして、しばらくした後に、デヴィッド・ロックフェラーによって日米欧三極委員会(トライラテラル・コミッション)を立ち上げるに到ったのだ。


CFRとトライラテラル・コミッションは、ポピュリスト右派の陰謀論者たちからは、パワー・エリートの具現化した姿として認識されており、むろん実際に彼らの考えるとおりである。しかしながら、ロスバードを読まなければ、このような考えを、歴史学的にの正しいパースペクティブに位置づけて捉えることは出来ないだろう。


なぜなら、ロスバードがいうように、CFRと三極委員会のネットワークというのは、アメリカの現代史に深く根ざした傾向が、最近はそのような形で現れている、というだけの話であるということなのだ。時代が変わっても彼らが別の姿をとって存在し続けることは間違いない。CFRとか三極委員会が生まれる前にも、パワー・エリートというのはこの国に存在していた。


そして、パワー・エリートたちは、CFRや三極委員会が無くなったり、別の形として存続するようになったとしても存在し続けるのだ。


ロスバードが暴露した歴史的・経済的なパターンは、これがCFRや三極委員会というグループに根ざした“陰謀“ではない、という点を理解することが重要である。


そうではなくて、彼が明らかにしたのは、アメリカ北東部で、上流階級の間に存在し、アメリカの歴史に深く根ざした、伝統的に存在するイデオロギー的傾向のことなのだ。


私が今、“陰謀“という風に、カギ括弧をつけて書いているのには理由がある。この言葉は、尊敬すべき右派と“過激派”である左派のお気に入りの愛用する悪口になってしまったからだ。


人間が自分の経済的、政治的、個人的な目的を実現するために、目的をもってある活動に関わることが、陰謀をめぐらすことになってしまうのであれば、合理的な金銭換算のできる人間というのは、誰もが陰謀を巡らせている犯罪者になってしまいかねない。その考えに立てば、人間にとっての選択肢は、目的のない、行き当たりばったりの、奇々怪々な行動を取るということしかなくなってしまう。


歴史というのは、この視点で見ると、不連続の活動の羅列としてしか捉えられなくなる。


だから、ロスバードによる世界観を、陰謀論であるとするのは間違っている。


国際金融資本は、実際にあからさまに出来る限りの計略を弄して、経済的・政治的な手段を駆使して、”全ての戦争を終わらせるための戦争”(第一次世界大戦)に我々アメリカ人を追いやったのだから、モルガン家がアメリカをこの戦争に引きずり込もうとしていたことを“陰謀”であると表現することは適切ではない。


これは、言ってみれば「公然たる陰謀」である。秘密結社の面々が、防音装置の整った企業の重役室で行った会合で決めたことではなく、そのような考えは公然と声高に表明されていたからだ。


(この点では、ロスバードの論文の中で、「ニュー・リパブリック」誌が、モルガン財界人とリベラル知識人の間で成立した、“戦争と国家統制主義の連合“を体現する意味で極めて重要な雑誌だった、という分析をお読み頂きたい。そのような現実は今もまったく変わっていないことに驚きを禁じ得ないではないか)


陰謀論者は、全ての社会問題をただ一つの「巨大な組織」のせいにする。急進フェミニズムは全ての社会悪を男性に押しつけるが、これも古典的な陰謀論と言っていいだろう。保守派の中の転向した共産主義者(つまりネオコン派)が、かつての同志を糾弾して、すべての社会悪はソビエト共産主義の害悪であるとする考え方も、陰謀論の一つであるといっていい。


ロスバードの理論が光っていて、他の学者達と決定的に違うところは、厖大な歴史的事実の裏付けがあるところである。


彼は、世界は何かの秘密結社だけの力によって動かされているわけではないと考えているし、全知全能の中央委員会が世界をこのように動かすぞ、という指令を出しているとも考えてはいない。


そうではなくて、多用な利益団体と政治派閥が利害の一致によって動いているというのが真実だという考え方をもっている、ということなのだ。


そして、彼らは、思想的に共通していると同時に、血縁的、社会的、経済的な連環によっても繋がっている。


ロスバードほど、この関係を探り当てて、わかりやすく解説してくれる学者は存在しないといっていい。彼は、米国の支配階級の国家に対する裏切りを余すところ鳴く書ききっている。


本論文「ウォール街、銀行、米国の外交政策」が書かれたのは、1984年のレーガン政権時代であるが、その内容はブッシュ政権の今に至っても、その内容に付け加えることは、本質的にはないといってよい。


レーガン政権というのは、出だしの段階では、東部エスタブリッシュメントに対抗する期待の星として出現したことになっている。ゆえにレーガンは、最初はパワー・エリートと、特にCFRと三極主義者の存在を否定することから始めた。


しかし、最終的には東部財閥でイエール大学のフラタニティである「スカル・アンド・ボーンズ」の典型的人物であるパパブッシュを副大統領とした段階で、やはり旧来のパワー・エリートに取り込まれてしまったのである。


パパブッシュは、長年のCFRの理事(ダイレクター)で、しかも三極委員会メンバーであった。ブッシュ父政権の閣僚の大部分は、統合作戦本部長のコリン・パウエルも含めて、CFRの会員だった。クリントン政権も似たようなものだった。大統領はCFRで三極委員会メンバー、政府高官のドナ・シャララ女史も、大統領首席補佐官のジョージ・ステファノプロスはCFRメンバーでローズ奨学生だった。国務省にはCFR出身者が蝟集(いしゅう)していた。国務長官のウォーレン・クリストファーに加えて、大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長のローラ・タイソン女史もCFRだったし、財務長官のロバート・ルービンも内務長官のブルース・ラビット、住宅都市開発省の長官のヘンリー・シスネロスも行政予算管理局のアリス・リヴリン女史も同様だった。


一方の共和党は共和党で、同様にエスタブリッシュメントとは党の主導部のレベルで協力し合っていた。ニュート・ギングリッチの右派ポピュリズムが後退を強いられた出来事に象徴されるように、東部エスタブリッシュメントの大物のヘンリー・キッシンジャー元国務長官の権力と威光は健在だった。政治家達が怖じ気づいたというのはもちろんだが、しかし、知識人階級のリーダーと共和党の自由主義経済“革命“のリーダーにも責任はあった。


どんなに説得力のある証拠を出してみたところで、このロスバードの論考で暴かれたような事実について真剣に考えることができない風潮があるというのは事実である。この構えがはびこるのは、ある種の臆病が蔓延しているからだ。


まず第一に、そんな陰謀論まがいのことを主張し始めると、誰にも相手にされなくなって、論壇で冷や飯を食わされるのではないか、誰が不安を抱く。


自分がカッサンドラの役回りを演じるのはご免だという風に考えているわけだ。カッサンドラというのは古代ギリシャ神話で出てくる予言者の名前で、彼は神様によって未来の凶事を予知する能力を与えられているのだが、その彼の警告には誰にも耳を貸さないのであった。


そんな目に会う位なら、権力者お抱えの御用歴史学者をやっていた方がどんなに楽な人生だろうか、と皆考えるわけだ。


ところが、このロスバードの論文を読んで、その内容に耳を傾けている人間は少なからず存在する。


なぜなら、真実というもの、あるいはそれを探求することは、公式の歴史や世間のその時代の社会通念よりもはるかに面白いものだからだ。


この論文を読めば、ロスバードが真実を解き明かしながら、非常に楽しんでいる、ということはよくお分かりいただけるだろう。彼はそのことによって、本物の学者に課せられた使命を果たしている。この論文だけでなく、彼の28にもわたる著作群や何千という雑誌記事や講演からもそのことを感じることが出来よう。


ロスバードは、カッサンドラと同じ運命をたどることを恐れてはいない。なぜなら、真実というのはそれ自体に価値があるのであり、それ自身のために維持され続けなければならない。そして、真実というのは幾ら隠していてもいずれ誰かによって暴露されるものだから。(おわり)


ジャスティン・レイモンド氏は、An Enemy of the State: the Life of Murray N. Rothbardの著者であり、「反戦ドットコム」のレギュラー・コラムニストである。


試訳:アルルの男・ヒロシ


蛇足


たしかに、陰謀論などこの世には存在しないかもしれない・。しかし、現実の世界は人類の進歩と調和を唱えた「大阪万博70」の頃より、ますます混迷しているように思う。経済大国のなれの果ての日本において、人間としての共存共栄などはマボロシになっている。歴史的に、欲深い西洋人が世界の秩序を崩壊させ、根こそぎそこの文化を滅ぼしてしまったことで、人類的視野に立てば「悪の塊」が世界へ拡散されている。ヨーロッパで生まれたローマ帝国とキリスト教を元に世界権力を行使する流れは、本当にあったのか、ただの幻想ではないか??西暦は数百年欠落していないか??など、歴史は断絶してはいまいか・・人間の歴史を消し去る所業に打って出ているように思う。我々は誰かに搾取されていないか・頭の脳内でイメージでよい方向に自分を向上できるなどと思えるほどバカではない・。世界中でその不可思議な構造を理解し、改革する動きがあるように見える。まず眼に見える悪行には手を貸さない事だ・。


衝撃の世界史2からhttp://www.asyura.com/2003/bd24/msg/490.html


1987年に亡くなったアルゼンチンのホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説『伝奇集』の中に、興味深い短編がある。題名は『ト-レ-ン、ウクバ-ル、オルビス・テルティウス』


 ボルヘスの物語によると、“ト-レ-ン”とは、メンフィスに住むある常軌を逸した南部の貴族から資金援助を受けた、頭のいい男たちのグル-プが発明した架空の惑星である。

 彼らはト-レ-ンの言語、哲学、数学などの細部にわたる完璧な集大成ともいうべき不朽の作品『ト-レ-ン百科辞典』を刊行するため、自分たちの才能と各分野からの協力者の力を注ぎ込む。しかし、彼らは人のいい大衆には一度にほんのわずかなことしか明かしていかない。 発起人たちは、“オルビス・テルティウス”という秘密結社のメンバ-であるが、こうした企てのすべてを永久に秘密にしておくことを誓いあう。

 ト-レ-ンでは、我々が知っているような時間の概念はない。過去は現在の記憶としてのみ存在し、未来は現在の希望にほかならない。そのため、過去を手直しして未来を変えてしまうこともたやすい。 ト-レ-ンにはまた、あらゆる物体はそっくりの複製物をもっているという理論がある。物体を消失してしまっても、心の中で強くその物体を念じることで複製物として取り戻すことができるのだ。たとえば二人の人間が一本の鉛筆をさがしているとしよう。一人はそれを見つけるが黙っている。もう一人は若干違っているがほとんど同じ別の鉛筆を見つける。この二本目の鉛筆は“フレ-ニ-ル”と呼ばれる。 40巻に及ぶ『ト-レ-ン百科辞典』からなる秘密のメンフィス・コレクションが、徐々に発表されていくと、ますます多くの人間がト-レ-ンを信じるようになり、その信念は、世界中で発見される見慣れぬ物質でつくられたト-レ-ン人の物体によって強化されていく。 「ト-レ-ンとの接触やト-レ-ンの習慣は、この世界を崩壊させた。その統制にとら

えられると人間性は、それがチェスの統制であって天使のそれではないことを忘れたり、忘れつづけようとする。今や、ト-レ-ンの推測上の『原言語』は学校にまで侵入してきた。今や、その調和にみちた歴史、感動的なエピソ-ドにみちた歴史の授業は、わたしの幼年時代を支配した歴史を抹殺した。今や、すべての人の記憶の中で、仮構の過去が他のものの位置を占領している。われわれはそれについて確かなことは何一つ知らないし、それが虚構であることさえ知らないのである」(ボルヘス) 
オルビス・テルティウスと呼ばれる秘密結社が、我々の現実と彼らの現実を、ゆっくりとすり替え、合理的な正気の世界を完全に崩壊させてしまったのだ」

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