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東大は出たけれど・・。

ベンチャー革命2006年4月1日

                           早稲田大学院MOT教授 山本尚利

タイトル:偽メール事件が暴いた日本型キャリアの根本欠陥



1.民主党:シナリオ発想欠如

 2006年3月31日、民主党偽メール事件(注1)の責任をとって、前原代表が辞任を発表しま

した。本事件の張本人、永田寿康議員も、前原辞職が決まった直後、議員辞職を決めまし

た。この事件を通じて、民主党は、親方日の丸企業の日本航空も驚くほどのあきれた危うい

組織であることを露呈しました。永田議員の辞職に伴い、4月4日に予定されていた西澤孝氏

(永田議員をだまして偽メールを提供したと言われているフリージャーナリスト)に対する

国会証人喚問も中止されました。いったいこの事件は何だったのか、国民は開いた口がふさ

がりません。産官学を問わず、組織が危機に直面した際、その責任者は、組織の崩壊を避け

るため、さまざまな防衛策をとります。その際、責任者の最大の課題は、おのれの責任のと

り方をどうするか、また、どのタイミングで責任を取るかに集約されます。それには、シナ

リオ発想が不可欠です。ところが、前原代表の一連の挙動を観察するに、そのような、いわ

ば責任者に必須の基本能力がまったく欠如しているようにみえます。組織代表者の辞任は、

そのタイミングが最も重要です。同じ辞任でも、タイミングを失した辞任は、組織への信頼

を回復するどころか、さらに悪化させます。前原氏の3月31日時点での辞任発表は、まさに最

悪の辞任劇の見本でした。組織の責任者としては完全に失格です。彼は今回の事件で、自分

が辞任しさえすれば、問題は解決すると、能天気に考えているふしがあります。これは大き

な間違いです。なぜなら、第三者からみれば、これで偽メール事件の真相が隠蔽されると映

るからです。第三者の目が想像できない人材が、組織の責任者に就任するとその組織がどう

なるかを、今回の事件は見せ付けてくれました。



2.偽メール事件主人公:永田寿康氏とは

 今回の偽メール事件の張本人、永田議員は千葉2区(八千代市、習志野市)の衆院議員で

した。この区は筆者の居住する選挙区です。1969年生まれの彼は現在、まだ弱冠36才で

す。2000年に初当選し、現在3期目です。筆者は、過去3回とも、彼に投票してきました。そ

の理由は、民主主義政治の理想は、二大政党の拮抗的競合状況の実現にあると信じるためで

す。地方の国民が自民党を半永久的に勝たせるなら日本に民主主義は育ちませんか

ら・・・。その意味で筆者は、積極的な民主党支持者でもなく、永田議員の積極的な支持者

でもありません。千葉2区で彼が民主党から公認されているから投票してきたに過ぎませ

ん。千葉2区で民主党に投票した市民の大半は、筆者のような浮動層市民でしょう。永田議

員にとって千葉2区のかつてのライバルは、江口一雄氏でした。県会議員出身の江口氏は地

元の有力者で、典型的な利権主義的自民党候補者でしたが、小選挙区制度になって、永田氏

の登場で落選しています。その永田氏は、民主党候補者像の典型です。すなわち、東大卒、

大蔵省入省、UCLAのMBAホルダーという華麗なキャリアを持っています。地元利益誘導の江口

氏とは対照的な候補者でした。千葉2区は千葉都民といわれる新住民居住地域であり、民主

党の作戦はズバリ当たり、筆者のような浮動層を大量獲得して永田氏は江口氏に打ち勝って

きたのは事実です。

 都会住民には無縁の自民党利権主義を嫌悪する多くの千葉都民(1票の重みが地方国民の

5分の1でしかない)が、自民党利権主義の対極に位置するようにみえたクリーンイメージ

の永田氏に投票してきたのです。今回、彼はその千葉都民の期待を完全に裏切ったといえま

す。



3.末は博士か大臣かの幻想

 今回の偽メール事件でみえてきたことは、永田氏に代表される日本型キャリアの欠陥が露

呈した点です。戦後の日本人は、東大にさえ入ればその後の人生が保証されるような幻想を

与えられてきました。東大卒の永田氏の大蔵省入りは、国費で留学するためのステッピング

ストーンであったと思われます。政治家志望の彼にとって米国有力大学への留学は、単にお

のれのキャリアアップの手段でしかありませんでした。一方、キャリア至上主義の幻想にと

らわれてきた日本の民主党は、彼の華麗なキャリアに惑わされて、彼を千葉2区民主党公認

候補として指名したのです。この時点で民主党は永田氏の政治家としての能力をすでに見誤

っていたのです。その人選ミスのツケが今回の事件で一挙に回ってきたのです。さて、今回

辞任した前原誠司氏は、京大卒、松下政経塾出身です。こちらも民主党の若手エリート議員

の典型です。永田氏、前原氏ともに民主党議員の典型的キャリア人材で、利権主義自民党の

議員とは対照的です。民主党若手議員の多くは確かに、華麗なキャリアエリートであり、ク

リーンイメージをもっています。ところが、今回の偽メール事件では、そのクリーンさが仇

となったのです。クリーンにみえた彼らは、単に世間知らずのボーヤであったにすぎないこ

とが露呈しました。自民党利権主義者のアンチテーゼとして登場した民主党若手エリートと

は、単に未熟者であった。その証拠に、永田氏の実母だけは、彼は政治家に向いていないと

見抜いていたようです。(注2)さすが、母の直感はズバリ当たっていたのです。

 要するに、よく考えてみれば、華麗な学歴を磨く努力や能力と、政治家としての資質はま

ったく関係ないということです。ここに日本の民主党の人事戦略に決定的な誤謬が存在しま

す。



4.日本人学歴エリートの根本的欠陥

 2006年3月31日、民主党は偽メール事件にかかわる調査報告書を発表しました。それによれ

ば、西澤氏は最初から永田氏に的を絞り、意図的に彼に接近して、故意に偽メールをつかま

せたことがわかります。その目的が単に、金目当ての詐欺なのか、何らかの陰謀なのかまっ

たく不明です。仮に陰謀だとしても、小泉政権維持のための陰謀か、それとも、創価学会か

ら訴訟を起こされていた永田氏個人を失脚させるための陰謀かもまったく不明です。いずれ

にしても、永田氏が西澤氏にだまされたのは確かなようです。それならば、永田氏は心底、

能天気の人間であることになります。民主党でもっともだまされやすい能天気政治家として

彼は選ばれた。問題は彼の華麗なキャリアパスが、彼を簡単にだまされない大人の人間に仕

立てることはなかった点にあります。このことは、日本における学歴キャリアパスは、精神

年齢の成熟した大人として要求される基本的能力開発にほとんど寄与しないことを証明して

います。かつてダグラス・マッカーサー元帥が「米国人が45歳の大人だとすれば、日本人は12

歳の少年である。」と述べたそうですが、この一言に彼の対日本人観がすべて凝縮されてい

ます。(注3)筆者は、永田氏の人材としての根本的欠陥は、大なり小なり、日本の産官学

の学歴エリート人材の根本的欠陥につながると思います。永田氏に代表される日本の学歴エ

リート人材の根本的欠陥は、先の太平洋戦争で、日本国を敗戦の悲劇に導いた軍閥エリート

の根本的欠陥とも、なんらかの類似性があるような気がします。この意味で、日本の産官学

の学歴エリート人材の根本的欠陥は、戦前、戦後を通じてまったく改善がみられないと思わ

れます。

 この日本の産官学エリート人材集団(厳密には似非エリート)の構造的欠陥は、長年、米

国覇権主義者から徹底的に研究され、今日までの日本の統治に、計り知れないほど役立って

きたと思われます。



注1:ベンチャー革命No.188「日本政治の親米化促進:偽メール事件の意味」2006年3月23日

注2:週刊現代2006年4月8日号、34ページ、講談社

注3:ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」下巻、375ページ、岩波書店、2004年



山本尚利(ヤマモトヒサトシ)

hisa_yamamoto@mug.biglobe.ne.jp


http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/melma.htm


http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/magazine-menus.htm

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