FC2ブログ

山本尚利氏コラムから

ベンチャー革命2006年12月13日

                           山本尚利

タイトル: 液晶パネルのカルテル疑惑:米国の逆襲か



1.液晶パネルの国際カルテル疑惑浮上

 2006年12月13日のマスコミ報道によれば、液晶パネルの国際カルテル疑惑により、液晶メ

ーカー各国の規制当局がいっせいに調査に乗り出したようです。この国際調査は、米国パソ

コンメーカーの要請を受けた米国連邦政府の規制当局が主導しているのではないかとの見方

が、韓国では広がっているようです。日本では、シャープ、東芝松下ディスプレイ・テクノ

ロジー、日立ディスプレイ、日立・東芝・松下合弁のIPSアルファ・テクノロジーなど日本勢、

そして日本以外では、ソニーに液晶パネルを供給しているサムスン電子、LGフィリップス、

友達光電などが調査対象です。

 朝日新聞(2006年12月13日朝刊)に掲載されている2006年7~9月の10インチ以上の液晶パ

ネルの国際シェア(ディスプレイサーチ調査)は、韓国サムスン電子24.1%、韓蘭合弁LGフ

ィリップス20.7%、台湾友達光電15.3%、台湾奇美電子11.6%、台湾中華映管6.1%、その他

と80%以上は韓国・台湾企業が占めています。日本のトップ液晶メーカーのシャープは6.0%

と6位です。ところで、液晶パネルを購入している大口顧客は、デル、HP(ヒューレット・パ

ッカード)、アップルなど米国PCメーカーです。その意味で、今回の国際調査が、米国PCメ

ーカーの圧力で動いているのはミエミエです。規制当局サイドは、訴えがあれば動かざるを

得ません。



2.液晶パネル技術発展の経緯

 液晶パネルの試作品は、米国RCAのデビッドサーノフ研究所で1960年代に開発されました。

筆者が1986年から2003年まで所属したSRIインターナショナルは、RCAを買収したGEのジャッ

ク・ウェルチから1987年にRCAのデビッドサーノフ研究所を研究員込みで無償譲渡されていま

す。70年代初頭、日本のシャープは電卓にRCAの液晶ディスプレイ技術を応用することに成功

しました。当時のシャープはデビッドサーノフ研究所の日本人研究員をスカウトし、液晶デ

ィスプレイの商品化に成功しました。その立役者は、佐々木正、元シャープ副社長であるこ

とは有名です。筆者の記憶によれば、シャープはそれ以降、デビッドサーノフ研究所に多く

の研究プロジェクトを委託しています。以上の経緯から、液晶パネル技術は、米国のR&Dエン

ジニアにより世界で初めて新製品化され、日本のR&Dエンジニアにより商品化された技術製品

の代表です。パイオニア的技術開発力に優れる米国人R&Dエンジニアと、改良的技術開発力に

優れる日本人R&Dエンジニアの相互補完による傑作が液晶パネル技術体系なのです。このよう

な事例は、アナログテレビやアナログビデオやデジタルビデオ分野でも観察できます。さて

DVD技術で日本メーカーは、現在、世界トップレベルにありますが、オリジナル技術DVI

(Digital Video Interactive)は、上記デビッドサーノフ研究所で80年代半ばに開発されてい

ます。

 さて、液晶パネルの量産は上記のように、2006年末現在、韓国と台湾メーカーに完全にリ

ードされています。液晶パネル商品化のリーダー企業であったシャープが6位とはなんとも情

けない限りです。液晶パネル技術の生みの親、米国RCAは今、もはや世界に存在しません。そ

の他の米国メーカーも、もはや液晶パネル事業分野には登場しません。この現状に誇り高い

米国人R&Dエンジニアはどのような感慨を抱いているでしょうか。ひさしを貸して母屋をとら

れた米国人は、日本人を含むアジア人に恨みを抱いていると考えたほうがよいでしょう。わ

れわれ日本人を含む、アジア人には、このように恨みを抱く米国人の心情に思いをはせるこ

とは皆無です。このツケが今、回ってきたといえるのではないでしょうか。



3.マイクロソフトのビスタ発売との関連性

 来年2007年早々、マイクロソフトの次世代OS(Operating System)であるビスタが発売され

ます。デル、HP、アップルなど米国PCメーカーは、ビスタ発売をトリガーとしてPCの大幅買

い替え需要の創出に手ぐすねを引いています。そのタイミングに、この液晶パネルの価格カ

ルテル疑惑が噴出したわけです。IBMはすでに中国レノボにPC事業を売却しています。残るデ

ル、HP、アップルの三大米国PCメーカーにとって、パソコンは米国の消費財製造業の最後の

砦です。PCのキーコンポーネントであるOS、マイクロプロセッサー、セキュリティソフトは

かろうじて、米国企業が押さえていますが、ハード部分は液晶パネル、二次電池を含め、ほ

とんどアジア企業に席巻されてしまいました。米国人は本音では、この現状に満足している

とは思えません。むしろ虎視眈々と逆襲の機会を窺っているとみたほうがよいでしょう。



4.ソニー製リチウムイオン電池リコールとの関連性

 ノートパソコンに内蔵されるソニー製リチウムイオン電池のリコールも、始めはデルとア

ップルから起こされています。(注1)

 この事件で不思議なのはHPからはソニーにリコール要求が起こされていない点です。HPで

は最近、経営陣の社内密偵での非合法手段採用が発覚して経営トラブルに見舞われていたこ

とが影響しているのか、それとも、なにか別の魂胆があるのかは不明です。

 ノートパソコンは、元々、航空機テロに使われる危険が高く、とりわけリチウムイオン電

池は可燃性であり、企業攻略の陰謀に利用されやすい側面をもっていました。その意味で、

今回の液晶パネルのカルテル疑惑浮上と、先のソニー製リチウムイオン電池リコール事件は

間接的に、なんらかの闇の関連性の存在を否定できません。



5.マルチメディア市場におけるアジアメーカーの台頭阻止戦略の始動

 世界規模で隆盛するマルチメディア事業分野にて、米国勢の逆襲作戦が始まるとすれば、

その開戦時期は、前述のように、ビスタ発売時期、すなわち2007年初頭でしょう。

 世界市場へのビスタの投入によって、世界に広がったPCユーザーの囲い込み戦略が始動す

ると思われます。マルチメディアのデジタル化の流れがすでに定着していますので、今後PC

とTVの融合化が限りなく進むはずです。超長期戦略で動く米国勢の次の手は、インターネッ

トの普及によりネットワーク接続された世界のPCユーザーを完全に支配するアジェンダをい

よいよ実現させようとすることでしょう。世界の人々のマインドコントロールのための現代

版バイブルとなるマルチメディア端末のキーコンポーネントとして、OS、アプリケーショ

ン・ソフト、マイクロプロセッサー、インターネット・プロトコル、セキュリティ・システム

の順に米国勢が押さえていますが、コンテンツ、ハード(液晶パネル、電池、電子部品な

ど)はまだ十分に押さえられていないわけです。

 それどころか、米国勢からみれば、放置しておくと、アジア勢が、マルチメディア技術体

系の上流部分(アンタッチャブル領域)に侵入してくる脅威が高まっているわけです。この

脅威を取り除く方法として有力なのは、米国資本によるソニー攻略のように、脅威の高いア

ジア企業を完全にアメリカナイズしてしまう方法です。(注2)

 しかしながら、米国勢にとって、アジア企業の中でソニーは別格であり、その他大勢のア

ジア企業は単に、攻略の対象でしかありません。今回の液晶パネルのカルテル疑惑国際調査

は、米国勢にとって、アジア勢の台頭阻止にむけての前哨戦のひとつと位置づけられるでし

ょう。



注1:ベンチャー革命No.207『リチウム電池リコール:ソニーの危機』2006年10月1日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr207.htm


注1:ベンチャー革命No.178『ソニーで占うセミ米国化』2005年9月24日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr178.htm




山本尚利(ヤマモトヒサトシ)

hisa_yamamoto@mug.biglobe.ne.jp


http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/melma.htm


http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/magazine-menus.htm

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kane552004

Author:kane552004
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR