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山本尚利氏のコラムから

タイトル:秋葉原テロ:プレカリアートの反乱







ベンチャー革命2008年6月3日

                           山本尚利

タイトル: 秋葉原テロ:プレカリアートの反乱


1.秋葉原テロの背景

2008年6月8日日曜日、昼下がり、東京・秋葉原の歩行者天国に暴走トラックが突入、運転手がナイフで無差別に殺傷を働き、死者7人、負傷者10人のテロ事件が発生しました。これは単なる通り魔事件にしては悲惨すぎます。最近、小林多喜二の『蟹工船』が爆発的にリバイバル・ヒットしていることに興味をもってネットで調べていて、プレカリアート( Precariat )という言葉を知りました。プレカリアートとはプロレタリアート(労働者階級)に似ており、雇用不安定労働者を意味します。派遣社員だった今回の犯人はそれに該当します。かつてのプロレタリアートは所属する労働組合を通じて権利主張ができましたが、プレカリアートはまったく権利主張の場をもちません。そのためいつ暴発するか知れない怖さがあり、ついにそれが起きてしまいました。このようなプレカリアートはグローバル競争を強いられる先進国で軒並み増加しています。プレカリアートという言葉からまず、2005年10月パリ郊外暴動事件が思い出されます。フランスの若者失業率23%、移民層失業率40%超とのこと。最近、韓国でも2008年5月、韓国政府が狂牛病の危険をもつ米国産牛肉輸入を再開したことに抗議して若者の反政府・反米デモが活発化しています。この背景にはフランス同様、韓国でも深刻な若者雇用問題が潜んでいます。今回の秋葉原テロも、その裏に日本の深刻な若者雇用問題が潜んでいます。しかしながら、近年の日本には若者が抗議デモをする場すらなくなっています。その息苦しい日本で秋葉原は若者の不満が一定程度、発散される貴重な場であったのですが、それは不健全で不完全燃焼の域を出ません。今回のテロ犯人はフランスや韓国の若者同様に、本来、格差社会を生み出した日本の政官財の権力者を憎むべきですが、あろうことか、自分と同類の犠牲者、ニート(オタク族を含むパラサイトで比較的恵まれた家庭に育ち、大卒も多く、親に依存している無職の世代、ロスト・ジェネレーションともいわれる)のたむろする秋葉原の群集を攻撃ターゲットにしたのです。これ以上の不健全犯行はあるでしょうか。犯人からみればニートの存在は許せなかったのでしょうが、憎む対象が完全に間違っています。1992年に起きたロス暴動で黒人が韓国人の経営するコンビニを襲ったのと似ています。

格差社会を生んだ責任者、小泉首相やその同調者は自分たちが狙われなくて内心、ほっとしているでしょう。


2.テロ犯人の置かれた環境

2001年、国民の幸福より、ブッシュ政権の幸福を重視する小泉政権が誕生して以来、われわれ国民の預貯金を元手に30~40兆円規模の円売りドル買いオペが行われました。国際金融資本に多額の円が渡り、その円が日本企業や日本の不動産に投資されて日本経済に覚せい剤のような効果をもたらしました。その結果、一時期、日本経済は確かに活気が蘇りました。そのおかげで、今回の犯人(25歳)も、派遣社員ながら、貴重な雇用にありつけていたようです。犯人は予想に反して無職ではありませんでした。18歳で高校を卒業して7年、ようやく明るい未来が開けたと思ったら、そこは地獄だったのでしょうか。

ネット情報によれば、犯人は製造業向け人材派遣大手、日研総業から関東自動車工業(トヨタ系自動車組立・部品メーカー)に派遣されていたようです。このところの原油高騰で、新車の売れ行きが止まり、彼の契約も今月末で打ち切られる予定だったそうです。企業において契約社員や期間労働者は雇用調節機能ですから、企業の業績の下降が予測されれば、真っ先に切られる運命です。犯人の犯行動機は、報道によれば「人生に疲れた、誰でもよいから人を殺したかった」というものだそうです。彼こそグローバル競争社会の生んだ鬼子であるといえます。

ところで、日本の最低賃金は時給5.8ドル(OECD統計2005年)で世界第10位、相対水準(対平均賃金比率)28%は世界第18位(OECD統計2006年)です。どちらの数字も弱肉強食の米国とほぼ同等です。小泉政権時代、日本は格差社会になったといわれますが、統計的にもそれが証明されています。これらの統計から、日本の若者の自暴自棄的行動が今後も増えることは当然、予想され、暗澹たる気持ちになります。なお、秋葉原テロのような若者の反乱は、小泉政権時代の2003年にすでに予想できていました(注1)。


3.プレカリアートを生み出した土壌

 筆者は1970年にIHI(石川島播磨重工業)に入社しましたが、その当時、IHIを含む日本製造業がもっとも力を入れていたのは、労働組合の懐柔でした。いわゆる御用組合化です。IHIの組合(労組)は社員全員を強制的に組合に加入させた上、人事部と癒着していました。この傾向はIHI特有のものではなく、日本の製造業労使関係の一般的傾向でした。IHIを含む日本製造業のもっとも有効な組合対策、それは会社寄りの組合活動に熱心な社員の昇進を優先するという方策です。戦後の官庁において、親米派官僚の昇進を優先する方策と同じです。この結果、70年代以降の日本製造業において、労組は社員への監視機関に成り下がり、被雇用者としての権利を主張する社員は左遷されるのが常識化してしまいました。日本製造業の経営者からみれば、円高環境でグローバル競争に勝つために労組の換骨奪胎はやむを得なかったのです。

 さらに80年代以降、円高時代を迎えて、国内労働現場では、労組の支援をより必要とする単純作業労働者ほど派遣労働者化が進み、同時に単純労働調達の海外移転が限りなく進みました。この結果、日本製造業が高度成長期に地方に立地していた労働現場の多くが空洞化し、地方経済の衰退を招いたのです。近年、海外労働賃金の高騰や知的財産防衛の事情により、一部、国内回帰がみられますが、その現場は極限の無人化工場になっており、地方の雇用増はほとんど期待できません。

 今日、日本の大問題は、日本政府も与党政治家も地方経済の空洞化に途方もなく無策だったことです。彼らは日本企業のグローバル化で空洞化する地方経済の穴埋めに、道路建設しか代替案を持たなかったのです。このどうしようもなく貧相な発想が、秋葉原テロの遠因となったと分析できます。本来、地方経済は欧米先進国のように、ハイテクベンチャーと農業と福祉を共存・共生させて雇用を促進すべきだったのです。決して道路建設ではありません。ついでにいえば、もっと奥深いところに潜む問題があります。それは日本の教育体制が工業化社会向けのサラリーマン大量養成システムと化して、まったくキャリアパスの多様性がないことです。この原因は教育政策官僚がおのれの経験をベースに教育体制を構築するからです。猫も杓子も大卒サラリーマンを目指すのは異常です。ドイツのようなマイスターの尊敬される社会、すなわちホワイトカラーだけが人生ではない、プロ職人が尊敬される社会(ガテン社会)を構築すべきだったと思います。その意味で、丁稚奉公制のあった戦前の日本の方がはるかに健全でした。


4.秋葉原テロを生んだのは小泉政権と日本企業の横並び体質(Me-Too)

 90年代の構造不況期、長期にわたって日本では新卒の若者の雇用機会が完全にシャットアウトされました。テロ犯人はその影響を強く受けています。大卒ではない彼(2008年に25歳)が高校を卒業したのは、小泉政権誕生の2001年近辺です。当時、犯人のように高卒で就職を希望する若者には、まともな就職先はなかったのです。

ところで小泉政権時代、格差助長政策の犠牲者として話題となったのは前述のようにニート(注2参照、2006年、62万人)でしたが、テロ犯人はニートではありませんでした。彼は青森で進学高校に進んだのに、大学に行けなかった逆境の若者(地方に多い若者像)です。彼にとって、ニートは近親憎悪の対象だった。なんと悲惨でしょうか。若者を中心に大量のニートやプレカリアート(派遣労働者96万人、厚労省統計2005年)を生み出した元凶は、対米隷属の小泉政治に並び、もうひとつあります。それは、成果主義を標榜しながら、実は、封建的年功序列を温存させた日本企業の欺瞞的雇用制度です(注3)。つまり、90年代の構造不況期、既得権益者の権利を優先するあまり、新規挑戦者(新卒者)を受け入れないという日本企業の横並び体質(Me-Too)が、高卒、大卒を問わず新卒の若者を完全に疎外化したのです。そのつけが秋葉原テロとなって表出したわけです。しかも、皮肉なことに、犯人の勤務先が、よい意味でも、悪い意味でも、もっとも日本的な雇用制度を採るトヨタの系列企業だったということです。

悪評高い天下り官僚に象徴されるように、日本の政官財に広く蔓延する既得権益者の組織ぶらさがり構造こそ、秋葉原テロを生み出した元凶であることをわれわれは思い知るべきです。


注1:ベンチャー革命No.041『若者価値観から占う日本の未来』2003年8月2日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr041.htm


注2:ベンチャー革命No.093『ニートとモラトリアム』2004年7月13日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr093.htm


注3:ベンチャー革命No.215『日本型年功序列の再考』2006年12月24日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr215.htm



蛇足


社会や他人のせいにして、人を殺す事に快感を持つ、無防備な人間を狙うなど卑怯そのものだ・。


その場で射殺が世界的なルールであるが、我が国の人権利権団体からすれば、こうゆう輩は必要悪なのだろう。暴力団組織に殴り込みにいくでもなし、ちゃんと自分だけ助かる事を考えている・。目には目で行かなければ、まだ、まだ、被害者が泣き寝入りしなければならないだろう。この10年で70件近く起こっている通り魔殺人を放置すれば、自警団などの防衛策が必要になる。

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1 ■コラムの内容

「秋葉原テロ」とはいかがなものか。同じ手口の通り魔事件は10年前にも下関で発生してます。その模倣犯が宅間守で、宅間守が附属池田小を襲ったのと同じ日付に秋葉原の事件です。狙ったのか偶然なのかはわかりませんが。
安易に「テロ」という表現を使うべきではないと思います。

2 ■案の定親方

おっしゃるとうりです・。個人的な快楽でしかなく、前例踏襲は官僚と同じ思考でただのァフォです・。

3 ■無差別な

通り魔は許せません。(T_T)

4 ■無題

福田政府は挫折を感じるにいちゃんは農業に精を出すように生命の大切さを知らしめるための方策をだしなはい・。
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