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山本尚利氏コラムから

ベンチャー革命2008年9月15日

                           山本尚利

タイトル: 汚染米事件発覚と自民党総裁選の関係


1.汚染米事件の背景:ウルグアイ・ラウンド

 2008年9月1日の福田首相辞任会見以降、大手マスコミはポスト福田の自民党総裁選報道一色となりました。ところが、それに冷水を浴びせるように、汚染米事件(有毒米の食用転用犯罪)が発覚、全国民をパニックに陥れています。米(以下、コメを指す)は日本国民の主食であるだけに、ことは極めて深刻であり、中国産の冷凍餃子の農薬混入事件(2008年1月発生)の比ではありません。

さて1986年から95年までウルグアイ・ラウンドが開催され、農産物を含む各国の輸出入品の関税などの取り決めが世界規模で行われました。なかでも国家の食糧安全保障に直結する穀物の取り扱いは各国の国益がからむのでもめにもめたようです。上記汚染米事件に関して、ウルグアイ・ラウンドで決められたミニマム・アクセス(最低輸入機会)という概念がマスコミで報道され始めました。なぜなら汚染米(事故米)は日本政府の輸入する外国米(ミニマム・アクセス米、MA米)のうち、食用に適さない粗悪輸入米を指すからです。

ネット情報によればミニマム・アクセスとは「輸入実績が国内消費の3%以下の品目(食用米はこれに該当)」について、一定量は低関税での輸入が認められ、限度を超えたら高関税を適用する制度とのこと。ここで注目すべきは「輸入を義務付けられてはいない」ということだそうです。ところが日本政府は「関税化の例外措置」(ミニマム・アクセス以上の米輸入を拒否)を選択、その対抗措置としてミニマム・アクセス分の米輸入をWTO(世界貿易機関、ウルグアイ・ラウンドを引き継いだ国際機関で95年設立)から義務付けられたようです。そして1993年ウルグアイ・ラウンド農業合意成立後、当時の日本政府(羽田内閣)はミニマム・アクセス限度いっぱいの外国米の輸入を決定する一方、国内農家に対し、減反政策(米生産減少)を行ってきました。

農水省食糧需給表によれば、昭和40年の日本の穀物自給率は62%であったものが、平成15年には27%まで低下しています。なんということでしょうか。

ちなみに2007年度MA米の輸入量は77万トンとのこと。日本の人口約1億2800万人(平成20年3月統計局)、日本人の米消費量4.9キロ/月/人(平成20年3月農水省統計)から計算すると現在の日本人の年間米消費量は約753万トンです。農家に減反させて日本の消費量の10%もの輸入米をわれわれは強制的に食わされています。国民の誰もが望まないこの状態は尋常ではありません。参考までに小麦粉消費量は約460万トン(平成13年農水省統計、なぜか直近の統計なし)です。輸入米に汚染米があるのなら、輸入比率87%の小麦には汚染麦はないのでしょうか、まったく解せません。また日本政府は自国農民に米の減反を強制するなら、なぜ国内消費量の増えている小麦生産を奨励しないのか、国益の観点から日本の農政は矛盾だらけです。ちなみに穀物は国家の安全保障に直結するので、経済論理(国産より輸入が安いという論理)を超越します。





2.穀物自給率を犠牲にした自民党のウルグアイ・ラウンド利権

90年代、上記、農家への減反政策(穀物自給率低減策)強要の見返りと称して自民党は地方国民向けにバラマキ型公共予算(6兆円規模のウルグアイ・ラウンド対策予算)を組み、おのれの利権に利用したことは記憶に新しいところです。地方の農民の一部は、製造業の地方工場のアジア移転(地方雇用の空洞化)に加えて減反政策というダブルパンチに見舞われ、やむをえず、ゼネコン労働者にさせられました。このウルグアイ・ラウンド対策予算は漁民訴訟が行われて悪名高い長崎県諫早湾の干拓事業や、ほとんど利用価値のない農業空港建設など、自民党を支えるゼネコンに実質的に流れたわけです。ちなみに2007年5月28日に不審な自殺を遂げた当時の農水大臣松岡利勝衆院議員は農水族の代表としてウルグアイ・ラウンド対策予算の利権の中心に君臨した政治家でした。

上記、亡国の減反政策により日本政府はあろうことか食糧安全保障の要、穀物自給率を自ら引き下げてきたのです。この政策は日本の国益に完全に反しています。日本の食糧安全保障の重要性が叫ばれる昨今、私利私欲の利権政治家のもたらす罪は日本の国益にとって底なしに重いといえます。

さらにその上、日本の穀物自給率の低下をいっそう加速させた原因、すなわち日本国民の一人当たりの米消費量を減らした原因、それは戦後日本人の食生活の米国化です(注1)。戦後、米国占領軍司令本部GHQは学校給食にコッペパンと脱脂粉乳の導入を図り、見事、日本人の食の嗜好を変えることに成功しました。こうして、米国覇権主義者の思惑どおり日本では国産米の消費減少に反比例して米国などから小麦の輸入が増えたのです。





3.起こるべくして起きた汚染米事件の戦慄

今回、汚染米の食用横流しという許しがたい犯罪を暴露された三笠フーズは、10年前からこの犯罪を行っていたと同社幹部が証言しているそうです。日本政府がMA米輸入を開始したのが95年(WTO発足年)頃であれば、ほぼ辻褄が合います。ネット情報によれば、2004年、小泉政権時代に「改正食糧法」が成立、米穀流通・販売の規制緩和が行われ、米穀販売業者が登録制から届出制に緩和されたそうです。さらに年間20トン以下の中小取り扱い業者への規制も撤廃された(米穀販売事業に参入自由)そうです。

さらに最近の原油高騰の影響で世界的に穀物価格が高騰、上記MA米価格も高騰、品質対価格の点で国産米に対する競争力を失い、農水省はMA米が国内で売れなくなって困っていたようです(注2)。

 以上の経緯から今回の汚染米スキャンダル勃発の原因をまとめると、(1)95年以降、日本政府による海外の低品質米の輸入(WTO強制)、(2)2004年小泉政権下、米穀流通業者の規制緩和、競争激化、悪徳業者参入、(3)2007年、世界的穀物価格の高騰、輸入米の競争力低下、そして日本政府が輸入米在庫処分に苦慮し、業者に足元をみられ、悪徳業者による汚染米の違法転売を見てみぬ振りをした(未必の故意)ということです。

 上記のような条件下、輸入米流通の犯罪が起こるべくして起こったといえます。またネット情報によれば、1年以上前から汚染米の食用転用犯罪に関する内部告発が農水省に届いていたそうですが、農水省はこれを1年以上、放置したようです。それならば上記、自殺した松岡農水大臣は生前、このことを知っていたのではないでしょうか。この農水省の不作為の罪は、厚労省のエイズ薬害事件、C型肝炎薬害事件と酷似しています(注3)。日本政府官僚の途方もない堕落に戦慄する思いです。





4.日本の穀物自給率向上を妨害する勢力はいるか?

原油高騰に引きずられた穀物価格の高騰に危機感を抱いた日本国民は、米生産量の増加と穀物輸入の低減により日本の穀物自給率向上(日本の食糧安全保障上、必須)を願い始めています。そのためには日本の潜在的米生産能力1200万トン(昭和30年の米生産量)に見合って国内の米生産量を正常化すれば、日本の穀物自給率は大幅に改善されます。マスコミでは、輸入穀物の価格高騰を受けて日本の食品会社が米のパンとか、米の麺を開発し始めたと報道していました。ところがその矢先、タイミングを計ったかのように今回の汚染米スキャンダルが何者か(仕掛け人)によって暴露されたのです。本事件は10年前から起きていた上、1年以上前に内部告発があったにもかかわらず、なぜこのタイミングでスキャンダルが暴露されたのでしょうか。実に不可解です。そして各テレビ局は国民が米食や米菓子のみならず、焼酎や日本酒などを摂取する気がしなくなるような気味の悪い汚染米の画像を頻繁に放映し始めています。この映像をみたら誰も米関連食品に食欲が湧かなくなります。かつて小泉フィーバーを煽った日本のテレビ局は一転、日本w)ス佑諒椴イ譴鯊イ靴討い襪・里茲Δ任后・海里茲Δ箆ケ釮癖麁擦任い辰燭っ・・遒屬里任靴腓Δ・E・魁・鐱椶旅鯤シ・詢┯・紊魎遒个覆だホ呂任后・・w)折りしも、自民党総裁選の真っ只中、小泉一派の支援で立候補している小池百合子氏は、その応援者で官僚バッシング・キャンペーンに熱心な中川秀直衆院議員(「官僚国家の崩壊」の著者)に同調、「霞ヶ関をぶっ壊す!」と絶叫しています。汚染米スキャンダル暴露の仕掛け人は、このタイミングにおける暴露によって農水官僚を貶め、官僚バッシングを繰り広げる小池氏を間接的に応援しているのでしょうか。そういえば、彼女は昨年の今頃、防衛省官僚バッシングでも手柄を立てました(注4)。日本の穀物自給率が向上し、小麦輸入が減ると困る勢力と、小池総理実現を期待する勢力は同類だと思います(注5)。2005年郵政民営化選挙で小泉フィーバーに踊らされた国民(一部の)は今回の汚染米事件が単に、悪徳業者とそれに癒着する農水官僚だけの罪ではなく、もっと根が深いと今度こそ感じ取って欲しいと切に願います。








注1:ベンチャー革命No.271『情報と技術を管理され続ける日本』2008年9月14日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr271.htm


注2:平成19年度、政府輸入米の半数は落札されなかったそうである。

http://blog.new-agriculture.net/blog/2008/07/000594.html
 

(2008年9月15日)

注3:ベンチャー革命No.250『薬害肝炎訴訟:福田首相の翻意とは』2007年12月24日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr250.htm


注4;ベンチャー革命No.238『小池総理実現の芽はあるか』2007年8月14日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr238.htm


注5:日本の穀物自給率向上を妨害しようとする勢力の狙いは、(1)近未来、日本が敵国化した場合、兵糧攻めしやすい状態にしておくことと、(2)日本に穀物を輸出して、貿易収支のアンバランスを緩和することの二点であろう。

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